水槽の脳

戯れ言

遺伝子勝ち組

こんな顔に生まれなければ良かった。

他人から憎悪を向けられるほど醜悪な容姿に生まれていたら、誰にも見向きもされず路傍の石のように素朴に地味に生きることができたのかもしれない。

もしもモンスターに生まれてさえいれば、きちんと「ぼく自身」を見て貰えたのかもしれないという期待や希望を捨てきることがどうしてもできない。

みんながぼくを「みている」ようでいてなにひとつ「みていない」、実際に評価されるのはいつも上っ面ばかり。

もううんざりだ。

恋愛関係で躓く度に強く強く強くより深く深く深く、その感情は激しい憎悪となってぼくの胸をどす黒く染める。

自らの容姿に呪詛を唱えることをやめられない。

「遺伝子勝ち組♡」なんて喜べてるうちは甘くて単純で能天気でおめでてぇな、心底羨ましいし憎たらしいよ。

ただの肉塊を包み込む皮膚やパーツで一喜一憂できるということは良くも悪くも「幸せ」だということだ。

妬ましくて脳味噌が沸騰しそうだ、忌々しい。

硫酸をAmazonで購入してこの顔を焼いてしまおうと思ったら、希釈されたものしか販売されていなかった。

人生がハードモードすぎるからイージーモードに変更しようと思っただけなのに、変更する為の手段さえもが既にハードモードで眩暈がする。

「可愛い」は正義じゃない、第三者からの圧倒的な暴力に耐えることだ。

そんなにぼくの内面は饐えていますか、腐臭を漂わせていますか。

もう言葉だけじゃどうしても伝わらない部分ができてしまうから、いっそのこと全力で殴り合おう。

殴り合って解り合おう。

ひととひととは話せば話すだけより一層解り合えないから、いっそ殴り合ってでも君と、みんなと、解り合いたい。

愛も憎しみも全て許容した上でしか前に進めないし進みたくない。

「普通」なんて経験したことがないからそもそも理解することさえできない、それは共感能力の有無の問題ではないと思う。

絶望 絶望 有り余る絶望。

地獄 地獄 見晴らしのいい地獄。

地獄の果てでふたりぼっちでパーティーをしようね、死ぬまで雁字搦めにしてあげるよ。

愛と書いて呪いと読むような、そんな恋愛しか知らないままぼくは死んでいくんだろう。

独りぼっちでいるより余程孤独に感じる。

「……助けて」呟こうとした言葉は声にならないまま宙を浮き、そのまま静かに消え去ってしまった。